Laywine's



ずいぶん前だが、さらさらと書けるボールペンを探していた。


アメリカのショッピングモールの文具店の女性は

それはウォーターマンであると言い

僕はそのとき、ウォーターマンのボールペンを買った。


神戸ナガサワ文具店の男性店員によれば

それはモンブランであり

胸ポケットから抜き出したモンブランを試し書きさせてくれた。


ウォーターマンはたしかにすらすら書ける。

だけど、完璧なすらすらではない。

紙によって、すらすら度が落ちるときがある。


モンブランはどっしりとインクが乗るけれど

すらすら、さらさらではなく

ぬめぬめ、こってりという感じで

もっと、力を抜いてどこまでも書けるボールペンが欲しかった。


京都伊東屋の文房具コーナーの女性は

カランダッシュのボールペンインクは

三千円もするのですが

これでないとダメだという指名のお客様が多いんです

と話してくれた。


そうだ、カランダッシュはいろんなところで

もっとも書きやすいボールペンだと言われている。


実はそのときカランダッシュは買わなくて

1年後、銀座の伊東屋でついに手に入れた。



たしかに、カランダッシュはどのボールペンよりもなめらかだが

それでも、完璧なすらすらではない。


そんなとき

映画クローズド・ノートで

沢尻エリカがドルチェビータ・ミニで大学の講義を

書いているのを見て

そういえば、大学のともだちでいつもパーカーの万年筆で

字を書いていた子がいたのを思い出した。


僕も万年筆が大好きで

いろんなものを万年筆で書いているけれど

日々の仕事に万年筆は使ってなかった。


考えてみれば

万年筆にさらさら度でかなう筆記具はない。

最初から、ボールペンじゃなく

万年筆で書けばいいんだ。

大学のともだちのように。沢尻エリカのように。



ただ、僕にはインクの色にものすごいこだわりがある。


ブルーはペリカンのロイヤル・ブルーでないと

貴賓ある透明感はでない


赤は、ラミーのレッドがすばらしい。

少しピンクを含んだ

アンダーラインだけじゃなく、文字を書くのにも適した色だ


日常のノートは黒が基本だが

真っ黒じゃいやだ

少し隠し色でグリーン、ブルーが混じる黒がいい


だけど、そんなインクがなかなかなくて

今日、トロントのいつもの文具屋で

店員に相談した。


黒人の彼女は

う~ん、雰囲気のあるブラックを探してるわけね

これはどう?


と、写真にある

自分の店オリジナルのインク

GRAPHITE BLACK

を出してくれた。


これが完璧に理想の黒


ドイツの工場に特別注文しているインクらしく

深い緑と、少しの青を含んだ

きちんとしたブラックインクだ。


万年筆はボールペンもすばらしいなら

とカランダッシュで探した。


カランダッシュは銀の軸でえんぴつ型のが有名だけど

それよりも、黒軸がいいので他のを出してもらうと

値段がたった$100

あまりに安くてこれはダメかと思ったら

ものすごい書き味で迷わず買った。


あまりに安かったので

店員がもう一本出してくれた

奥のペリカン$175も買ってしまった。


ペリカンの万年筆は

最初はポキポキとした硬い書き味が普通だ。

そして、しばらく使い込んでいると

あるとき、自分の書き癖にペン先が慣れ

突然、インクが泉のようにこんこんとあふれでる。

こうなるともう手放せない。


カランダッシュは最初からもう

力をいれずにどこまででも書けてしまう。



最初考えてた予算の半分くらいで

万年筆を二本も買えてしまったので

残りをバナナ・リパブリックのシャツに使った。